高待遇に華やかなイメージが相まって人気の海外駐在員ですが、本帰国後に転職してしまう方が多くいます。
海外駐在上がりといえば出世コースに思えなくもないのですが、なぜでしょうか?
結論からお伝えすると「キャリアの閉そく感」が理由です。
以下、細かい事情をお伝えします。
この記事の目次
意外に多い!海外赴任者の4人に1人が駐在帰りで転職?
「安定的な立場で海外勤務を経験したい」という理由で目指す方が多い駐在員ですが、日本へ帰任後に転職してしまう人が実は多くいます。
私個人の友人関係にある方々でも、帰国した瞬間に外資系に転職したり、日系他社の駐在員として舞い戻ってくる方が少なくありません。
少し古いですが過去の研究では海外帰任者の12%は年内に退職、13%は翌年に退職。つまり2年以内に25%は離職するというデータもあるそうです(Lazarova and Caligiuri 2002)。
4人に1人が2年以内に辞める…かなり高確率ですね。
上記は20年近く前の外国のデータなので、現在の日本にどこまで当てはまるのかは謎です。
ただ、海外で多くの駐在員に囲まれている筆者の体感値としても「駐在後に転職する人は多い」と感じます。
海外駐在員が帰国後に転職してしまう5つの理由
帰任後に元駐在員が転職してしまう理由は実はかなりシンプルです。主だった理由をいくつか挙げてみます。
[box05 title=”駐在員が帰国後に転職する理由”]- 社内に居場所がなくなる
- 日本の仕事に違和感を覚える
- 仕事が退屈に感じる
- 海外での成果を評価・共感されない
- 海外キャリアを他社から高く評価される
理由①:社内に居場所がなくなる
1年程度の短い期間であればまだしも、数年日本を離れると本社での居場所がなくなってしまう場合があります。
自分が出国した時とはオフィスの人間関係も、部署間のパワーバランスも微妙に変化しています。ちょっとした浦島太郎状態…と言えばわかりやすいでしょうか。
また業務の面でも数年間の変化についていけないこともあります。
社内のポジショニングもわからなくなり、業務のトレンドも後追いとなる。
そのため駐在前にバリバリ活躍していた方が帰国後になかなかパフォーマンスを発揮できず悩むケースがあります。
社内政治力が高い方であれば海外で働きながらも日本の情報をつぶさに得ることができるでしょう。一方、日本とほとんど連絡を取らずに駐在業務に邁進してしまうとこのケースに陥りがちです。
理由②:日本の仕事に違和感を覚える
「日本の常識は非常識」と揶揄されるように、日本の商習慣は世界の中でも独特です。
日本の仕事は「プロセス」や「確実性」を重視する傾向があります。そのため仕事を進める際の提出資料や承認の手間が多い。また細かい報告や連絡を求められます。
一方で海外の仕事は「結果」が大切。そのためのプロセスは雑でもあまり気にしません。また多少の「不確実性」があったとしても「スピード」重視でどんどん前に進みます。
もちろん日本には日本の良い面もあるのですが、海外から帰ってくるとこのギャップに疲れてしまう方が多くいます。
日本の商習慣だと頭ではわかっていても「本質的じゃない」と感じてしまうのです。
理由③:仕事が退屈に感じる
簡単にいうと「刺激がない」ということです。
海外では駐在員は何でも自分でやらなければなりません。言い換えればある程度のことは自分の判断でどんどん進めていける、ということです。
もちろん重要な意思決定は本社の判断を仰ぐ必要がありますが、少なくとも現場レベルの判断はほとんど当人に任されています。
程度の差はあれども海外駐在員は「責任者」で「会社や事業部の代表」として仕事を切り盛りしていきます。
また驚くような商習慣や文化の違いに戸惑うことも多いのですが、ある意味では「刺激的」な毎日を過ごします。
そういった環境から日本へ舞い戻ると、日々の仕事が退屈に思えて仕方がない…と感じる方が多いようです。
「駐在中は大変なことばかり…と感じていたけれど、離れてみれば意外と寂しい」という心境ですね。
これは海外でバリバリと精力的に仕事をしていた人ほど陥りやすい状況です。
理由④:海外での成果を評価・共感されない
海外で日系企業、そして日本人が成果を上げるというのはものすごく大変なことです。
言葉もわからない、文化も違う中で四苦八苦しながら成果を上げなければなりません。
しかしそれが必ずしもせいとう評価されるとは限りません。
どれだけ頑張っても日本の主要事業には勝てないことが多いからです。
特に、新興国では物価が安いので客単価も下がります。
死ぬほど苦労して日本より高い成長力を実現できたとしても得られる収益は日本より全然少ない…なんて日常茶飯事です。
そのため、帰任後に海外での苦労を正当に評価してもらえない元駐在員は多くいます。
会社側も海外に送り込んだ社員を優先して評価するわけにもいきません。
ただ…海外で苦労して帰ってきた身としてはつらいわけです。
また、不当な評価以外に「海外で経験してきた仕事に対して共感してもらえない」という事情もあります。
海外での苦労は海外で働いた人にしかわかりません。
例えばインドで数年駐在して戻ってきたとします。インドと言えば「人を選ぶ」鬼門。
インドで数年間働くというのは普通の日本人にとっては本当に大変なことです。
これが同じインド経験者同士ではもちろん、インド以外でも海外経験者同士であれば「インドでの大変さ」に共感してもらえます。
一方、普通の日本人(=海外赴任経験なし)の方にとってはインドなんて「象」と「カレー」のイメージくらいしかありません(実際は象より牛の方が多いのに)。
インドがいかに大変だったのかを語ったところで「へー大変だったね」という反応で終わります。
海外ハードモードでの細かい仕事の話や自分の出した成果について「評価」はもちろん「共感」すらしてもらえないのです。
総合商社のように社内での「海外駐在出世コース」があれば別なのでしょう。
ただ、普通の企業ではこのように「元駐在員の評価方法や扱い方がわからない会社」もあるのです。
理由⑤:海外キャリアを他社から高く評価される
一方で転職市場を見てみると「海外駐在経験者」を欲しがっている企業が少なくありません。
総合商社や超大手メーカーのように人材が豊富な会社であれば別ですが、人材不足に悩む会社は外部から駐在員を調達することもあります。
また海外勤務でなく国内の海外事業部としての需要もあります。
日本国内勤務と言えども海外を肌で知る人間が求められています。
すでに数年間海外を経験し、実績もあるのであればその時点で経歴としてはかなりユニーク(独自性がある)な存在となります。
社内で評価されなくて悩んでいたところ、社外から好条件でオファーがあって…という流れで転職してしまう人があとを絶たないのはこのような背景があるのです。
駐在員の帰国時転職理由は「帰国後のキャリアアップ」
こうして並べてみると元駐在員が転職したくなるのも至極当然です。
集約すると最も大きな転職理由は「帰国後のキャリアアップ」です。
旧態依然とした会社では海外事業に対する重要性がまだまだ低い。
一方で日本から世界へ本気で羽ばたこうとしている日系企業は増えています。
海外キャリアを武器に、自分を高く評価してくれるところへキャリアアップを図るのは自然なことだと思います。
もし駐在後のキャリアに悩んでいるのであれば転職エージェントで自分の市場価値を確かめてみてください。
海外赴任前よりも格段に上がっているはずです。
駐在経験者となれば「ハイキャリア人材」の扱いです。
下記のような転職エージェントを活用すると大きく年収アップが狙えるはずです。