SNSの投稿やネット記事を見てると、時折「日本から脱出して海外へ飛び出そう」とか「東南アジアで月5万円稼いで自由を手に入れよう!」みたいな情報が目に付きます。
今後、海外キャリアは重要になっていくでしょうし、個人的にも海外で働く経験を持つ日本人は増えて行かねばならないと思っています。実際転職支援もしていますし。
でも「日本での環境が辛いから海外へ行きたい」という逃げるような理由で海外へ出てくるのはやめた方がいいと思います。
私自身が海外で数年働き、転職支援をしながら感じていることを書いてみます。
誤解しないでいただきたいのは、海外転職、海外キャリアそのものを否定するわけではありません。
逃避や逃亡が理由になっている場合は少し立ち止まって考えて欲しい、というのが本記事の趣旨です。
この記事の目次
日本が合わない=海外が合うわけでもない
日本から海外への転職相談をされる方には様々なタイプがいます。掘り下げていくと中には下記のような問いがきっかけとなっている場合があります。
「自分には日本の組織や社会は窮屈すぎる、海外の方が活躍できるんじゃないか?」
この問いは半分は正解ですが、半分は誤りです。
たしかに海外で活躍する日本人は日本人っぽくない
海外で活躍する日本人にはいくつかのパターンがあります。
駐在員として海外を渡り歩くベテラン駐在員。プロの傭兵みたいなスキルで日系外資系問わず活躍する現地採用社員。
中にはフリーランスとしてマイペースに働く人や、若いうちに日本から飛び出し起業して成功した人もいます。
それぞれ活躍のパターンは違えども、だいたい共通して性格が日本人っぽくありません。
自己主張が強かったり、マイペースで集団より個を大切にしていたり、ものすごい結果主義だったり。
元々の性格があったから海外でうまくやれるのか、海外で過ごすうちに変化したのかはわかりませんが、とにかく日本では珍しいタイプの人が多いのは事実です。
ただ、だからといって「日本が合わない=海外が合う」という単純な対立構造ではありません。
日本が合わないがさらに海外の方が合わないという人は多い
たしかに海外でうまくやっていけてる日本人の中には「日本よりも海外の方がウマが合う」という人の方が多いです。
一方で「日本が合わないと思って出てきたけど海外の方が合わない、ツライ」という人もけっこういます。
特に若い人や逆に年配の方に多いですね。
日本と海外は北と南、東と西、みたいな対立構造ではないんです。
例えるならば人を食材として捉えた場合の調味料みたいなものでしょうか。
日本を醤油、海外をソースとして考えてみてください。
食材の中には醤油が合わないけどソースが合うものもあれば、逆のパターンもある。
一方醤油とソースの両方が合う食材もあるし、両方が合わない食材もありますよね。
醤油よりソースの方が合う食材があるように、海外の方が活躍できるん人材というのはたしかにいます。
ただ、日本が合わない人に必ずしも海外が合うわけではないというのは注意すべき点です。
日本より海外がユルいわけではない
最近特に若い方向けに、
- 日本は過度の管理社会でストレス社会
- 海外の方が気楽で気ままに働ける
- 新興国だとお金もかからないから少ない稼ぎでも大丈夫
- 飛び出して気楽にやろうぜ
というような情報を見ることがあります。
一見すると「日本より海外の方がユルいよ!」と感じますが、実際そうでもありません。
確かに外資系企業はもちろん、日系企業でも海外子会社となれば雰囲気はだいぶ変わります。
日本のような細かすぎる確認や作法もなければ、管理も少し緩やかかもしれません。満員電車に揺られることもありません。
でも海外には海外ならではの辛さはあります。
外資系の場合はものすごい結果主義で解雇リスクと背中合わせ。日系企業の場合は海外理解の浅い本社との板挟みでストレス三昧。
またどのような会社でも外国人スタッフとの協業やマネジメントは必須です。文化も仕事の価値観も違う外国人たちに翻弄されることも多々あります。
さらには生活環境の違いも。日本のように毎日安くて美味しい和食は食べられません。国によってはお酒が異常に高くて飲めない場所も。水道水は飲めないし、新興国では電気屋エアコンが頻繁に故障する国もあります。
それゆえにたとえ新興国であってもある程度の生活をするのであればそれなりにお金がかかります。
どこに行こうが結局は一生懸命仕事をして稼がないとダメなんです。
何を言いたいかというと、海外での仕事や生活は海外ならではの大変さがあるということ。
もちろん仕事をして生活していけば慣れてきますが、勘違いしたまま海外へ来てしまうと痛い目をみるかもしれません。
海外で日本を捨てると多くの日本人には何も残らない
日本を嫌いになって逃げるように日本を出て来てしまうのは他にもデメリットがあります。
日本を捨てて海外で生きることは難しいですし、日本を捨てると多くの日本人には何も残らないという点です。
海外には日本との縁を完全に切って生きている日本人もいます。でも、多くの日本人は海外に出ても日本人として生きなければなりません。
グローバルカンパニーのグローバル職として仕事をする場合は別ですが、多くの場合仕事でも日本人としての日本で培った人脈やマナー、ビジネススキルを期待されます。
国籍の意味でも、精神的な意味でも、見られ方や扱われ方の意味でも、私たちは外国人にはなれないです。
どれだけ長く海外には住んでも現地人にはなれません。心の拠り所は日本となります。
海外には出てきて日本に固執しすぎる必要はないのですが、逃げるように出てきてもあまりいいことはありません。
たとえ海外に出てこようとも、私たちには「日本で培ってきたもの(スキル、マナー、人脈、文化理解など)」が期待されるのです。
逃げるように出てきた人にはこの「日本で培ってきたもの」が不足していることが多いです。
海外へ出てくるなら強い意志とパワーを持って
経済はますますグローバル化していきます。日本人が海外で働くことは今後珍しいことではなくなっていくかもしれません。
また海外キャリアのチャンスも増えていくでしょう。
ただ海外で働くことは決して楽な道ではありません。
ネガティブな理由が背景となっている場合は一度立ち止まってみても良いかと思います。