日本にいるうちに「海外で働く時のために資格を取っておこう」と考える人は多いでしょう。
ただ、同時に「日本で取得した資格なんて役に立つのだろうか…?」と迷っている方も少なくないでしょう。
この記事では海外キャリアコンサルタントの視点から、海外で役立つ資格を整理してご紹介します。
この記事の目次
海外で直接的に役立つ資格はあまりない
いきなり話の腰を折るようで申し訳ないですが、海外ではエリアを横断して転職が有利になるような資格というものあまりありません(弁護士や会計士などいわゆる「サムライ業」の国際資格は別)。
ただ、日系企業や日本人に関わる分野で働く場合は「能力や経験を証明する共通言語」として役立つ場合があります。また、外資系に努める場合に共通言語となる資格も少なからずあります。
「資格よりも経験」な世界なため過度な期待を寄せすぎるのもよくありませんが、参考情報としてご参照ください。
語学系の資格
海外で働くなら必ず関わってくるのが語学です。
英語関連の資格
まずは英語について。英語圏はもちろん英語以外の語圏でも求められます。英語圏以外でも、現地オフィスでの公用語は英語になる場合がほとんどだからです。
日本ではTOEICが人気で、昇進条件に設定している会社があるほどですね。日系企業に転職するのであれば海外でもTOEICは活躍します。なぜなら、すでに会社で基準を設けている場合もありますし、面接官がTOEICの経験者で自らの知見をもとに英語力を判断できたりするからです。
決して「TOEICがあれば英語が使える」というわけではないのですが、日常会話レベルであれば600以上、日系企業とはいえ業務で使うのであれば700以上あると説得力があります。
ところが世界基準で見てみるとTOEICはそこまで汎用的な指標ではありません。むしろ、TOEFLやIELTSの方が頻繁に聞きます。この2つは教育機関への入学や留学、移住の基準でも使われることがあるのでポピュラーなのは当然かもしれません。
ただ、日系以外の企業の場合でも採用活動で厳しく見られているかというとそうでもありません。CVに書かれたスコアよりも、目の前でどれだけ話せるのか?でチェックされる傾向が強いでしょう。
逆を言えば、どれだけ過去に素晴らしいスコアを残していたとしても、今目の前で話せなければ「話せない」と思われてしまうということです。
資格のために受験するというよりは、英語力を継続して向上させる「指標」として定期的に受験する、という意識の方が良いでしょう。
[box05 title=”役立つ英語資格”]- TOEIC
- TOEFL
- IELTS
英語以外
行きたい国が英語圏ではない場合、現地語の認定試験を受けておくと非常に有利です。
現地のオフィス内の会話が英語であっても、プライベートでは現地語を使う場合も多々あります。また、顧客が英語を話せない国もたくさんあります。その際に多少でも現地語を話せる場合は重宝されるでしょう。
中国語であれば中国教育部が推進する漢語水平考試。それ以外の言語でも各国と提携した語学検定があるので調べてみてください。
[box05 title=”英語以外で役立つ語学資格”]- 漢語水平考試 (Hanyu Shuiping Kaoshi、HSK)
- その他、各国語の認定試験
専門職種系の資格
業種や職種に関連する資格については、「世界共通資格」というのはほとんどありません(サムライ業は除く)。ただ、一部「技術や経験の証明書」として役立つ場合があります。日本の資格でも日系企業の下で転職を狙う場合は役立つことがあります。
Web,IT系
日系企業の進出に伴い、日本人プログラマーの需要も一定量あります。現地資本や外資で「日系顧客対応」というポジションもあります。
システムやネットワーク管理系の仕事では資格が経験の証明となる傾向があります。一方Webやアプリ開発ではそこまで資格は必要ではなく、経験があれば問題ありません。逆に資格があってもプロジェクト経験が無い場合は技術力が無いと判断されがちです。
[box05 title=”Web,IT系で役立つ資格”]- IBMプロフェッショナル資格認定制度
- オラクル認定技術者制度(ORACLE MASTER)
- MCP資格制度(Microsoft Certification Program)
- シスコ技術者認定(CCNA)
- ノベル認定技術者
- PMP(Project Management Professional)
- C言語プログラミング能力認定試験
- PHP技術者認定試験試験
など[/box05]
サービス技術職系
一定数以上の日本人が住む都市では常に日本人サービス技術者の募集があります。
特に日本人が経営する理美容室は大きな都市には必ずあります。最近だと日本人経営の美容室だがターゲットは現地人、というお店も増えています(日本人の技術力は高く評価されています)。
調理人の場合はさらに顕著で、「ローカル向けの日本食店」も増えてきています。富裕層向けのコンセプトのお店も多いため、実績のある日本人料理人はかなり高値で雇用される傾向にあります。
日本人組織で働くのであれば日本国内の免許は技術の証明となります。現地資本や外資の下で働く場合は経験がものを言います。
[box05 title=”サ―ビス技術職系で役立つ資格”]- 調理師免許
- 理美容師免許
- ネイリスト技能検定
- 保育士
- 教員免許
など[/box05]
工場・現場管理系
特に新興国を対象に、円借款を通じた日系プロジェクトは多数動いています。高速道路から地下鉄、モノレール、さらには高層マンションやビル建築などがあります。その都度、日本人技術者や管理者の補充が必要となります。また、海外生産拠点では工場管理者が必ず必要です。
日本国内の資格がそのまま海外でも使える場合は少なく、ほとんどの場合は現地で再取得となる場合が多いでしょう。ただ、日本国内での経験や技術の証明として採用時に役立ちます。日本で現場業務を行う際に必須となるものがほとんどなので、「あらたに取得」というほどではないかもしれません。
[box05 title=”工場・現場管理系で役立つ資格”]- 施工管理技士
- 電気工事士
- PMP(Project Management Professional)
- 測量士
- エネルギー管理士
- 電気主任技術者
- 危険物取り扱い
- 衛生管理者
- 安全管理者
など[/box05]
会計・貿易系
「金銭管理や集計・管理は日本人に任せたい」という日系企業は多く、経理や会計にまつわる仕事は一定数あります。また、会計ファームや監査法人などの海外進出で現地採用としての需要も多くあります。
その際に、米国資格を持っておけば「業務を英語で遂行する能力がある」という証明となります。雇用側が日本人の場合は日本国内の資格でも証明となります。
また、担当業務によりますが商社やメーカーで通関士の資格がプラスに働くことがあります。現地に物が入ってからは日本と勝手が違うものの、輸出入では国際ルールも多いため一般的な輸出入の知識があれば役立つからです。
[box05 title=”会計・貿易系で役立つ資格”]- 米国公認会計士
- 米国税理士
- 米国公認管理会計士
- 公認会計士
- BATIC(国際会計検定)
- 日商簿記
- 通関士
- 貿易実務検定
など[/box05]
大卒資格(学士)
参考までに記載しますが、大卒資格というのも馬鹿になりません。というも、国によっては「4年生大学の学士」つまり「Bachelor」が就業ビザ発給の条件となっている場合があるからです。
また、ビザ発給の必須条件となっていなくとも、「Bachelor」が無い場合は発給条件が厳しくなる場合もあります(通年発行ではなく半年限定になる、など)。
もちろん卒業資格を求めない国もありますし、規定にあったとしても実際には機能していない(裏金などで片付いてしまう)場合もあります。
ただ、昨今「意味が無い」と言われることも多い大卒資格ですが、海外で働くという意味では持っておいて損はありません。
学生の方で「意味がないから退学しよう」と思われている方は一度踏みとどまって見てもよいかもしれませんよ。
まとめ
くつかのカテゴリーに分けて海外転職や就職で役立つ可能性のある資格をご紹介しました。
記事冒頭でも触れたとおり、「これがあれば転職が有利に進み給与もアップする」という魔法の杖的な資格は存在しません。
最近ではMBA(Master of Business Administration)ですら、相当難易度の高いスクールでもない限りは優位性が薄れているとも聞きます。
「海外転職に向けて資格を取る」というよりは、「専門知識の向上も含めて資格取得に励む」という感覚の方がよいかと思います。
また、「十分なスキルが溜まるまで待つ」よりも早いうちに海外へ出てみるのも選択肢です。海外へ飛び出るのはそれなりに負担がかかるため、しがらみの少ない若いうちの方が良い、という考え方です。
海外へ飛び出るタイミングについて悩んでいる方は下記もご参照ください。