海外で働くならば、海外の仕事観や転職観について知っておいた方がよいです。
海外で働いた後に日本へ戻る場合もありますが、今の時代を考えると海外でさらにキャリアアップを狙う方も少なくないでしょう。
その際の予備知識として海外における転職に対する考え方や価値観をまとめてみます。
日本の転職観というものは海外から見るとかなり特種です。
そのままの価値観で海外へ出ると戸惑うこともあるかと思いますので、事前に海外の転職事情について知っておいてください。
この記事の目次
日本の転職事情はいまだに『石の上にも3年…』
海外に触れる前にまず日本の状況を整理してみます。
今さら声大きく語ることでもありませんが、日本では長らく終身雇用を前提に年功序列の下で企業経営されてきました。
しかし昨今では大企業ですら倒産や吸収合併の憂き目に合い、終身雇用神話は崩壊しています。
もはや高度経済成長期のように、毎年安定して業績が伸びていく時代ではありません。
事業が安定して拡大していくことが前提となる年功序列制度は時代遅れとなりました。
今では大企業ですら海外のように「実力主義」を掲げ、旧い人事体制を変えようとしています。
ところが、それでもいまだ多くの日系企業では年功序列型組織から考え方が抜け出せていません。
能力の高い若手がいてもベテラン社員の給与より低いことはざらですし、外部からの転職者よりも新卒から属している社員を重宝したり…。
このような状況ですので働く側も「年収を上げるには昇進」という考え方がベースになっています。
「長く働くことが良いわけではない」という価値観が叫ばれ、だいぶ浸透してきたようには感じますが、いまだに「石の上にも3年」という言葉は消えません。
採用面接の場でも3年以内に転職した経歴があると「この人は何か問題がある」と判断されるのが普通です。
年収は転職で上げる!海外の転職事情
一方海外ではどうでしょうか?
世界をひとくくりに語ることは難しいのですが、少なくとも欧米やASEANの場合「給与アップ」=「転職」が当たり前です。
海外の場合、勤続年数はそこまで給与に影響を与えません。「何ができるか?何を担当するのか?」が非常に重要で、ポストを元に給与が確定します。
また、日系企業のように「内部昇進」が頻繁にある会社は稀で、仮に新しいポストができれば外部から人材を調達する方が主流です。
ポスト、つまり立場や仕事の内容で給与が決まるものですから、良いポストを求めて人材は激しく動きます。
日本のように「会社のために…」と働く人は稀で、仕事はすべて自分のため。少しでも良い待遇や条件があれば転職していくのが普通です。
期間についても「数年いたら長い方」という感覚です。3年で辞めたとしてもしかるべき経験や理由があれば全く問題ありません。
むしろ成長著しいASEANだと3年いると「長い方」です。変化が激しいASEANでは1年2年で辞めるのが普通です(※)。
※必ずしも計画的な転職ではなく、我慢ができずに辞める人もいます。清濁含めて「そういう感覚なんだな」と理解してもらえれば良いかと思います。
家族のような日系企業、傭兵のような外資系企業
少し感覚的な話をすると、日本では従業員は「家族」と表現されることが多いのですが、海外だと「傭兵」という感覚かもしれません。
あくまで典型的な日系企業の話にはなりますが、日本の場合は全員で経営目標を達成するぞ!という感覚が強いです。
自分の目標も大事ですが、会社全体が成長していくことが大切。
また、職場は一種の「社会」的な雰囲気を帯びており、プライベートでも仲良くすることが多いです。
日本の経営者はよく従業員を「家族」として表現しますが、まさにそれに近い関係値です。
一方、海外だと会社全体の成長はあまり関係ありません。とにかく自分の役割を全うし、自分の目標を達成することが重要です。
また、職場は仕事をする場所であり、プライベートは完全に職場の外にあります。まさに給与を元に雇用された傭兵のような感覚です。
海外で面白いのは「チーム移籍」というのが頻繁に起きることです。新天地へ転職し、同じ部署にまだ空きがある場合、前職のメンバーや部下も巻き込んで転職する場合があります。
この場合、先に転職した人がある程度会社と話を付けることがほとんどで、後から転職する人の給与もできる限り段取りしておくこともあります(もちろん給与UPが前提で転職してもらう)。
まさに戦場を移動して回る傭兵集団のような感覚ですね。
海外のホワイトカラーは国を超えて働くことを躊躇しない
会社を変える「転職」が給与を上げる手段として一般的だという話をしましたが、海外での転職を語る時にもう一つ知っておくべきことがあります。
それは「働く場所」の感覚です。この感覚が日本人と外国人では大きく違います。
海外で働くと世界がシームレスにつながっていることに驚きます。
日本で「海外で働く」というと「一生の決断」や「根性の別れ」のように扱われることがあります。
一方、海外のホワイトカラーの人たちは働く国を変えたとしても「国内転勤」くらいの感覚です。
例えば友人の話をする時に、日本だと「あいつ今何やってるの?」「そういえば名古屋転勤になったらしいよ」となりますよね。
海外だと「あいつ今シンガポールに転職したよ」とか「上海で2年くらい働くって言ってたよ」というような会話になります。
筆者は現在東南アジアに滞在していますが、日本人でも「インドネシアの次はタイで働いてみたい」というような感覚が普通になってきます。
海外では自分の人生は自分でコントロールするのが当たり前
少し話がそれましたが、海外における転職事情のポイントをまとめると下記4点です。
[box05 title=”海外の転職事情を理解するポイント”]- 転職は収入アップの常套手段
- 仕事は会社のためではなく自分のため
- 会社は家族というより傭兵の集まり
- 国を跨いで転職することも普通
無理矢理一言にするのであれば「自分の人生は自分で切り開く」という人生観とも言えるかもしれません。
日本では長らく「人生とはレールのようなもの」と言う感覚がありました。しかし、もはやレールなんてどこにも存在していないのかもしれません。
大手企業に属していたとしても、いつ倒産や買収の憂き目に会うかわからない。そしてクビを切られる可能性だってあります。
海外の転職観の裏側には「そもそも会社を信頼していない」という理由もあります。こんなご時世ですから、たとえ日本国内で働いていたとしても海外の転職観から学ぶことはあるでしょう。
いずれにせよ日本でも海外でも、「自分の人生は自分でコントロールする」という気概があった方が幸せになれるのは自明です。
最後に一言添えますが、この記事は海外の考え方を推奨して日本の考え方を否定するものではありませんのでご留意ください。
最初の海外転職におけるキャリアップの考え方について知りたい方は下記の記事もご参照ください。