「海外への転職に興味があるけど、どこの国がおすすめなんだろう?」と悩む人は少なくありません。
日本を除いた「外国」は190か国以上存在します。その中から「1つ」を選ぶのは大きな判断ですよね。
結論から書くと全員にとって「おすすめ」の国を選ぶのは難しいです。ただ、転職先として国を選ぶ際に見るべき「ポイント」はあります。
また、筆者の主観も含まれますが最近のトレンドからおすすめの国をリストアップすることも可能です。
本記事では、
- 海外転職での国選びで見るべきポイント
- 最近のトレンドから転職先としておすすめの国
をご紹介します。
この記事の目次
海外転職の国選びで見るべきポイント
はじめに海外で働く国を選ぶ際に見るべきポイントをお伝えします。優先順位があるわけではなく全部大切なポイントです。
[box05 title=”海外転職の国選びで見るポイント”]- 給与と生活費
- 就労ビザ取得の難易度
- キャリアの拡張性
- 日本人求人量
- 生活のしやすさ
ポイント① 給与と生活費
誰しも最初に考えるのは「給与」です。「今の給与と比べて上がるのかな?下がるのかな?」と気になりますよね。
ただ、給与を考える際には同じく「生活費」も気にするようにしてください。
仮に現地で高い給与をもらえたとしても生活費が高ければ実際の収入としては下がることになります。
極端な話、給与が1.5倍になっても生活費が2倍になってしまえば使えるお金(貯金できるお金)は減ります。
逆に、給与が0.8倍になっても生活費が0.5倍(半分)になれば使えるお金(貯金できるお金)は増えます。
あくまで参考程度ですがMERCERが2018年に発表した「生活費が高い都市ランキング」によればトップ10は以下の通り。
1位 香港
2位 東京
3位 チューリッヒ
4位 シンガポール
5位 ソウル
6位 ルアンダ
7位 上海
8位 ンジャメナ
9位 北京
10位 ベルン
ざっと見た限りだと全体的に「住宅費」が高い都市がランクインしている印象です。これらの都市に転職する場合は給与が高くても家賃比率を考慮しなければなりません。
もう一つ、参考程度ですが今度は「平均給与の高い国ランキング」もご紹介します。how much.comが2018年5月に発表したデータによれば、世界で手取り給与が高い国は下記の通り。
1位 スイス / 5万8864 USドル
2位 ルクセンブルグ / 4万6593 USドル
3位 アイスランド / 4万5390 USドル
4位 韓国 / 4万4892 USドル
5位 オランダ / 4万3835 USドル
6位 オーストラリア / 4万1655 USドル
7位 英国 / 4万1608 USドル
8位 日本 / 4万1139 USドル
9位 ノルウェー / 4万834 USドル
10位 アメリカ / 3万9211 USドル参考>>How Much Money People Take Home After Paying Taxes(howmuch.com)
全体的に社会保障が手厚い国が上位に来ている印象ですね。
上記はあくまで「平均」データです。実際は職種によって大きく異なるし、格差もある。
例えばアメリカは日本より下位にランクインしていますが、専門職(特にIT系)の場合は日本より報酬が高い傾向があります。
全体の傾向は参考にしながらも、給与は求人情報をもとに個別に判断していった方が良いでしょう。
ポイント② 就労ビザ取得の難易度
その国で働きたい!と思っても、海外では「就労ビザ」がないと働くことはできません。ビザの難易度も考慮をして転職活動を進める必要があります。
多くの国の場合は受け入れ先の現地企業がスポンサーとなり、就労ビザを取得してくれます。
ただ「大卒学士」や「専攻と就業分野の一貫性」が求められたり、「社会人として数年の業務経験」が必要など条件は国によって様々。
そもそもビザ発給条件を満たせていなく、転職活動自体をキャンセル…という結果にならないよう、事前に調べておくに越したことはありません。
ビザ取得難易度が高いからといってその国で働けない、ということではありません。
しかしビザ取得難易度が高い国ではそれなりに準備することも増え、現地での再転職活動に制限が出る可能性もあるので留意しておくべき事項でしょう。
ポイント③ キャリアの拡張性
海外に出たと言っても、海外でただ働くだけではキャリアにはなりません。専門的な経験を積むことにより初めて「海外キャリア」と呼ぶことができます。
海外でキャリアアップしていくためには「転職」は常套手段です。あなたの人生計画にもよりますが、キャリアアップを重視する場合は「キャリアの拡張性」も考慮した方が良いでしょう。
例えば「将来的には英語をバリバリ使ってグローバルビジネスマンとして活躍したい」という目標があったとします。しかし今現在はビジネス英語が不足している…。このケースだと「英語が公用語として使われるマレーシアに一度転職し、その後にシンガポールへの転職を狙う」という戦略が考えられます。
また、逆に一つの国で徹底的に専門性を高める戦略もあるでしょう。その場合は英語が通じにくく保守的な国(例えばインドネシア)などに転職するとよいかもしれません。
ポイント④ 日本人求人量
日本から海外へ転職する際、いきなりグローバルビジネスマン(国籍関係なくスキルだけで働く人)として活躍できる人は稀だと思います。
最初は多かれ少なかれ国籍≒つまり日本人であることを武器に仕事をすることになります。
その際に重要なのは「日本人求人量の数」です。
求人量はタイミングによって変動しますが、1つの指標となるのが「日系企業数」及び「在留邦人数」の推移です。
例えば外務省がまとめた「国別日系企業数推移」を見てみましょう。
sanko
数だけで見れば中国の拠点数が圧倒的に多いです。しかし平成28年は前年比がマイナス、平成29年はわずか0.1%の増加、と若干中国には陰りが見えています。
逆に伸びているのは東南アジアで、特にインドやタイ、インドネシアが安定して増えているのがわかります。米国も安定的に数は増えていますね。
もう1つ参考データとして「国別在留邦人数推移」を見てみましょう。
中国では過去5年に渡り在留邦人数が減っているのがわかります。米国やオーストラリアは安定しています。タイやマレーシア、インドネシアでは増えています。
この辺りを眺めていると、日本人の需要だけでいけば中国は減りつつあり、東南アジアが伸びているということが読み取れます。
ポイント⑤ 生活のしやすさ
仕事をするということはその国で生活をすることです。生活のしやすさも大きなポイントになってきます。
一般的に見るべき視点は「インフラの充実度」、「余暇の過ごし方」、「日本食の有無」、「言語環境」などでしょう。
特に日本食の有無は意外に重要です。
「海外なんだから日本食なんて必要ないよ」と思われるかもしれませんが、しばらく住むとどうしても日本食が恋しくなるものです。日本食レストランやスーパーマーケットの有無はチェックしておいた方が良いでしょう。
生活環境は耐えられる幅の個人差も大きいし、実際に住んでみてわかることの方が多かったりします。
せめてものできることとして、
- 事前に日本人が書いている現地ブログを読み込む
- 実際に働いている人の話を聞く
- 連休を使って試しに滞在してみる
等は取り組んだ方が良いでしょう。
海外転職でおすすめの国
海外転職で「誰にとってもおすすめの国」というのは存在しませんが、優先順位によってはおすすめの国というのもあります。
個人的な意見も含みますが、おすすめの国をいくつかピックアップしてご紹介します。
[box05 title=”海外転職でおすすめの国”]- シンガポール
- アメリカ
- マレーシア
- インドネシア
- インド
シンガポール
シンガポールは東南アジア経済の中心です。多くの国際企業がシンガポールに拠点を置きながら東南アジア全体の事業を管理しています。
東南アジア市場の盛り上がりは今後数十年続くと言われており、シンガポールの重要性が下がることは考えにくいでしょう。一流のビジネスマンが多く集まり、平均給与もかなり高いです(家賃や物価が高いことも考慮されている)。
一方で転職難易度も高くなりつつあります。
世界中から多国籍企業が集まっており公用語も英語のため高い英語力が求められます。また英語が話せるだけではなく高い専門スキルも必要。
さらに昨今は外国人労働者へのビザ規定も厳しくなりつつあります。
とはいえ今後グローバル経済を語る上ではますます外せない国であることは間違いありません。またシンガポールでやっていければ他の英語圏への転職もしやすくなるでしょう。
例えば私の知る人はシンガポールで数年働いた後、日本へ一度戻りましたが現在はアメリカで働いています。
[box03 title=”シンガポール転職のポイント”]- 難易度は高いが給与も高い(ただし生活費も高い)
- グローバル企業、ビジネスマンが集まっている
- 世界で通じるキャリアを築ける
アメリカ
20世紀に引き続き21世紀の現在でも世界経済の中心としての地位が揺るがないアメリカ。企業時価総額ランキングでもトップ5全部をアメリカの企業が占めています(2018年8月時点)。
格差が大きいと言われるアメリカですが、その分専門職に対する扱いは高いものがあります。特にIT大国だけありIT系エンジニアは日本とは比較にならない給与をもらうケースもあります(もちろん高い技術力は大前提)。
とにかくバリバリと専門性を高めて働きたい、という人には最適の国です。
ただし転職難易度は世界的に見てもかなり高めです。
外国人がもともと多い国ですので、外国人だからといって特別な職があるわけでもありません。すでに日本人の数も相当数いるため日本人向け求人の競争率も高いです。
企業によっては「就労ビザは自分で取得してください」という企業もあります。
また、当然ですが非常に高い英語力が必須となります。
[box03 title=”アメリカ転職のポイント”]- 専門職に対する報酬が高い
- 一流の専門スキルを高めやすい
- ただしネイティブレベルの英語力が大前提
マレーシア
マレーシアは「東南アジアの優等生」と呼ばれており、ここ数年は年平均5%の安定した経済成長を見せています。
首都のクアラルンプールは整備もかなり進んでおり、中心部の雰囲気はシンガポールに近いものを感じさせます。
最近では世界最高齢の首相としてマハティール氏が着任し、ものすごい勢いで改革を進めています。
マレーシアの魅力は「英語が公用語でありながら、完璧な英語でなくとも働ける」という部分です。「英語力に不安があるが英語を使って働いてみたい」という人には最適な選択肢でしょう。
給与水準は低いですが、物価はかなり安いため逆に可処分所得が増える可能性もあります。
日系企業の数は減っていますが、在留邦人の数は増えており日本人求人も安定しています。
まさにはじめて海外転職する際の候補国としてはおすすめできる国の1つです。
[box03 title=”マレーシア転職のポイント”]- ビジネス英語実践トレーニングに最適
- 日本人向け求人が多い
- 物価が安く生活しやすい
インドネシア
インドネシアは世界第4位の人口を抱える巨大な国です。日本との繋がりも深く、古くから進出している日系企業も少なくありません。
短期的な課題も多い国ですが、平均5%前後の経済成長はしており、将来的には間違いなく世界有数の市場として頭角を現す国と言われています。
インドネシアではビジネスで英語も使われますが、インドネシア語が公用語です。また、独自の商習慣や文化も多い。そのためインドネシア語を習得し、現地に慣れた人材は重宝されます。
一方であまりに独自性が強いことからインドネシアの経験を使って他国へ転職するのは難易度が高いかもしれません。
ムスリムが多い国なので、ムスリムとのビジネスの知見は他の国でも生きる可能性はあります。
一か所でとことん独自性を高めてみたい、という人にはおすすめの国です。
[box03 title=”インドネシア転職のポイント”]- 将来的な市場としての注目度が高い
- インドネシア専門人材が重宝されていく可能性がある
- 他国への転職は制限されがち(ムスリムの国は別)
インド
最後は変わり種です。
世界第二位の人口を抱える巨大市場のインド。1国だけで約13億人を抱えており、内需の成長に高い注目が集まっています。
ここ数年で急激に進出する日系企業の数も増えていますね。
また内需だけではなくIT系人材の排出国としても有名です。高い技術を持つプログラマーを多く海外へ送り出しており、インドの中でもユニークなスタートアップ企業が続々と生まれています。
まだまだ成長段階の国なので平均所得は高くありませんが、外国人にはビザの規定で例外的に高い給与が保証されます(年収ベースで25,000USドル以上が必要)。物価を考えると可処分所得は増える可能性が高いです。
一方、インドはビジネスの面でも文化の面でもかなり癖のある国です。インドに転職したものの合わずに挫折する人も少なくはありません。
逆にインドという国をマスターすれば今後長くに渡り重宝される可能性があります。
一度訪れてみてやっていけそうだ、と感じたならば選択肢としては大ありでしょう。
[box03 title=”インド転職のポイント”]- 意外に高い給与をもらえる
- IT産業での世界的影響力が高い
- 人を選ぶので文化が合えば希少価値が上がる
イメージだけで決めるのは厳禁!
つらつらとおすすめの国を挙げてきましたが、これらはあくまでも一例です。
国選びについては人のおすすめではなく、最終的にはあなたと合うか合わないかが大切です。
性格の面、キャリア計画の面の両方からあなたにマッチする国を選んでください。
ある人には素敵な国でも、あなたにとっては合わない可能性もあるでしょう。
やはり事前に訪れてみたり、先に働いている人の話を聞いたり、難しい場合は最悪でも現地を知る転職エージェントに相談してみる、などの情報収集が大切です。
くれぐれも「イメージ」だけで判断していくことのないよう、ご注意ください。